社会人で栄養系大学院選びに苦労した一例
社会人になって大学院に行きたい理由は、
現在やっている仕事を論文としてまとめたい、
学歴に箔をつけたい・・・など様々ある。
私は、中学生の時から、なんとなく研究者に憧れを抱いていて、大学院に行ってみたいとずっと思っていた。
しかし、大学の時はアルバイトと授業・実習で日々を忙殺されていて、
卒業した時は、ようやく給料をもらいながら土日をゆっくり休むことができるとホッとしたことを覚えている。
その後、管理栄養士として社会人を数年経験し、運よく大学で期限付きの研究員として研究室配属で働くことができた。
そこで、大学で働くためには学位が必要だと痛感し、もっと学んでみたいと思うようになった。
中学生の時に思っていたことを思い出したのだった。
退職の期限が近づき、私の大学院探しが始まった。
当時、クリニックで糖尿病患者への栄養指導のアルバイトもやっていたため、もっと糖尿病の栄養指導について学びたいとも思っていた。
研究室の種類は大きく2つに分かれる。
病院などで臨床調査を行ったり、人に栄養剤を飲んでもらうような介入を行う実践系研究と呼ばれるもの、
ラットや試験管を使って体内のメカニズムを明らかにする基礎研究と呼ばれるものである。
試験管なんて学生実験以来触ったことがなかったので、私はもちろん前者で探さないといけないが、基礎研究は大学でしかできないことでもあるので少し魅力も感じていた。
しかし、基礎研究は、医学部・薬学部・理学部・農学部などの方もされているため、競争率も高く、大学院に入ったはいいが研究室で終日実験を行うとなると継続が難しく断念した(自分は実験で素人な上、結婚していたため家に帰れないのはひんしゅくをかいそう・・・)。
さて、本来であれば仕事として所属した研究室で大学院に行けば、教授との連絡もスムーズであるし、今までやっていた研究の続きで論文を書くことができるため、ストレスを感じることがない。
しかし、新しい環境に飛び込んでみたいと思うのも人の心理。
他の研究室はどのようなことをされているか見てみたい!と思い、他を当たってみることにした。
まず、苦労したことその①
「教授探し」
大学院の条件として上げたのは次の3つとした。
・自宅から1時間程度で通うことのできる大学院
・社会人を受け入れている大学院
・管理栄養士養成施設であり実践系研究を行っている研究室
三番目の管理栄養士養成施設にこだわったのは、
自分はまだ管理栄養士としての基礎が未熟であり、管理栄養士の倫理観も含めて教授陣から学び取りたかったためである。
ホームページ上では大学院で何をされているか詳細な情報がほとんどなく、
教授の最近の論文も最新になっていない場合も多い。
失礼だが、論文検索サイトなどで教授の名前を検索し、論文や学会発表を最近やっていなければ候補から除外した。
研究室のホームページがあれば、かなり良い方である。
ようやく絞り込み、第一希望の教授を決めた。
その教授は、実践系研究に加え、少し実験も行っていた。社会人大学院生の受け入れも多く、様々な学会でも評議員などをされていて業界では名の通った先生の一人であった。
一度お話をした時もあり、年下の私に非常に気さくに接して下さっていたので、記憶にも残っていた。
決め手は先生の雰囲気が良かったことだったと思う。
よし、この先生に会いに行こう!
次は会うために連絡を取らなければならない。
「アポ取り」
まず、現在所属している研究室の教授に、他の大学院に行きたい希望を伝えた。
「いいんじゃない」と背中を押してくれた。
自分の研究室を希望すると思っていたに違いないが、そのような言葉をかけてくれた。
後ろ髪を引かれる思いで、アポイントをとった。
ホームページでメールアドレスを調べて、どのような研究を行っているか聞きたい旨をメールした。
すぐに返信があり、訪問日を設定することができた。
苦労したことその②
「打ち合わせ」
一回目の打ち合わせ:
2,000円ほどの手土産を持参し、挨拶に伺った。
研究室での活動や、現在の大学院生のテーマ、施設の設備などを聞いた。
受験することを快諾してくれ、受験を決めた。
研究室としては緊急のテーマはないとのこと。
研究は、自分のアルバイト先で患者のデータを使う方がよいと言われる。
テーマについては、まず自分で考えることとなった。
メールでのやり取り:
テーマ案をアルバイト先の院長にも聞き、考えてテーマ送る。
が、しかし、すべてボツ。
研究としての目新しさがないとのこと。
願書の締め切りが2週間前に迫り、テーマが決まらず焦る。
二回目の打ち合わせ:
1,500円ほどの手土産を持参し、研究テーマの打ち合わせを行った。
テーマのヒントをもらいに行ったが、なかなかアイディアが出てこず。
二時間ほど話した後、大まかな案が決まる。
アルバイト先でで調査・介入をする方向になった。
ここで、常勤ではなくアルバイトという身分で調査をすることで責任はどうなるか、
給料や待遇などに関することで院長との意思疎通がうまくいかなくなったことなどがあり悶々と悩んでしまった。
ここまで打ち合わせをしておきながら、
教授への信頼がなくなってしまい、院長ともギクシャクしてしまったため、
大学院受験を断念することに決めた。
それと同時に、働いている研究室に進学したい思いが湧いてきた。
自分でも、本当に虫のいい話であると非常に反省しているが、どうしてもこのタイミングで大学院に行きたいことは譲れなかった。
どうやって説得すればいいんだ!
絶対怒られる・・・
いや、命を取られることはないんだ、殴られてもいい、伝えよう!
苦労したことその③
「説得」
働いている研究室の教授に他大学院受験断念を伝え、本研究室の大学院に進みたい旨を伝えた。
めちゃくちゃ怒られた。
教授)何を今さら、他に行くって言ったよね。
私)すみません。
(私の心の声:…ですよね。わかっています。言い訳はありません。)
教授)はぁ。
教授)わかった。受け入れます。
私)あ、ありがとうございます!
無事、受け入れが決まった。
次は先方に受験断念の連絡を入れねばならない。
苦労したことその④
「断りの仕方」
先方の教授に受験断りのメールをまず行った。
その後、手土産を持参し、受験断念のお詫びに直接伺った。
しかも、働いている研究室を受験することを伝えた。
かなり驚かれたが、最後は叱責を受けることもなく、表面上穏やかに事を済ますことができた。
今でもその驚きの顔と、私を直接見ない目が忘れられない。
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
結局・・・
働いている研究室の大学院を受験し、合格した。
今までと同じ環境だが、教授とも報連相がうまくいき、親身に相談にのってくれた。
研究も進みが良かった。
学部生ならそのまま大学院に進学しやすいが、社会人の大学院受験は自分のフィールドを持って調査することが大前提になっていることを知った。
フィールドは自分の慣れている場所であり、裁量できる方が良い。
全て新しい環境で事を進めることが私にはできなかった。
ある程度環境に慣れてから、少しずつアップデートすることが自分には合っているかもしれない。
今回は非常に勉強になった。